風柳斎さん
小田氏リプレイ第三回
天文十九年まで特に動きはなく、訓練に励んでいた。
夏、ようやく武将が説得に応じ、仕官してくれた。元佐竹家臣、江戸忠通である。築田とほとんど変わらぬ能力だが、いないより遙かにましだ。
この時点で既に、身動きがとれなくなっている。自軍は、どんなに増やしても二万足らず。敵は最低でも二万を有し、多いところで三万を越える。
敵一国なら勝てる自信はあるが、既に小田家は外交的に包囲されている。もはや、敵は十万を越えていると言っても過言ではない。
南や西は、北条と同盟関係にある国ばかりで、おいそれと手を出せぬ。
勝貞が一人だけ強くても勝てるような数ではない。現に前回の敗戦は、戦闘値の優位だけを頼ったものである。
……忠通 ……どこかよい寺はあるか ……?
天文二十年。太田城から早馬が飛んできた。口上をを聞いた儂は早々に部屋に籠もり、忠通を呼んだ。
儂は仏門にはいる。あとはおまえが小田家を守れ。任せたぞ。 ……うるさい! 頼むから出家させてくれ ……もう儂は嫌じゃ ……
ええーい! 大名になれるのだ、ありがたくおもわんか! こんな機会でもなければおまえなど、絶対になれんのだぞ!
なに? 一門じゃないと、家督はゆずれん? ………やむをえんな。…最後の一兵まで戦うか。
時は流れて天文二十三年。ついに北条が里見を滅ぼした。千葉や上杉と同盟しているやつが、こちらに来ることはないだろう。もし、里見義尭が我が家臣になれば、窮地を脱することが出来るかもしれん。来てくれ、義尭。
年号は弘治へと変わった。
義尭が北条に登用されてしまった。すぐに内応をかけたが、あっさりと拒否された。さらに悪いことに、北条に知れるところとなり、友好関係が悪化した。
……入道名は ……あれにしような ……
期待していた、戦闘97里見義弘も北条の手に ……
否、北条は上杉とは同盟していなかったらしい。もうすぐ来る ……やつが ……
弘治三年春。忠通も逝ってしまった。儂は入道し、天庵と名乗ることにした。(編集機能を使っても、職業特性は付けられないのが残念なところです)
もはやいかんともしがたい。あとは降伏し、寿命を全うするだけだ。だが、その辺の弱小勢力に降るのは御免故、史実通り北条に降ることにしよう。おそらく、すぐに千葉が降り、次が我が小田家だ。
……なぜだ、氏康殿! なぜ降伏勧告をしてくれぬ! 攻め込んでこなくとも、儂はもう戦う気はないのに ……太田城に退却することにしよう。
永禄二年夏。民が十分に満足し、儂を祝ってくれている祭りの最中のこと。氏康殿が、直々に会見を求めてきた。やっと来てくれたか ……
こうして、儂は北条殿の家臣となった。
第一次小田家天下統一計画、失敗。